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[コラム] 外国産デッキのローカライズ


 
  • 2016年12月02日

インターネットというツールが普及し、発達した現代において、遠隔地の情報を入手することはそれほど難しくありません。

WCS2016の決勝戦が行われた翌日には、多くの人が「メガバトルデッキ60 MタブンネEX」を買いにカードショップに駆け込んだのは記憶に新しいことでしょう。 TwitterやFacebookなどで情報を集めれば、地球の裏側で行われた大会の結果ですら、1時間足らずで確認することができます。

そんな現代においては、デッキレシピも国境を越えて広がります。

国外で実績を残すなどして、話題となったデッキのコピーと翌日のジムバトルで対戦する事もしばしばあります。
今回は日本国外で生まれて広まったいくつかのデッキについて分析しようと思います。


国外とのカードプールについての事情


欧米を主とするいわゆる「海外環境」、具体的には日本と韓国を除く地域と日本ではカードプールや細かいルールなどに差異があります。
理由としては、日本ではポケモンカードゲームの販売や公式イベントの運営は株式会社ポケモンが行っているのに対し、海外ではその子会社であり、シアトルとロンドンに拠点を置く The Pokemon Company International (TPCI) の Pokemon Organized Play (POP) という部門が行っています。

世界数十ヶ国でプレイされているポケモンカードゲームですが、今回はアメリカを例に、日本国内との環境の違いを考えていきたいと思います。

ポケモンカードeシリーズまで、米国でのポケモンカードゲームはトレーディングカードゲームの始祖である、Magic the Gatheringで知られる、Wizards of the Corst 社によってライセンス販売されていました。

MTGのローテーションシステム(使用可能なエキスパンションの更新)の影響からか、米国のポケモンカードは、同一シリーズの中で使用可能、不可能となるカードがあります。 例えば、2015年のWCSはBoundaries Crossed(日本のBW6)からRoaring Skies(XY6)のカードを使って行われました。

日本では直前のレックウザメガバトルをBW1-XY6のカードプールで行っており、決勝大会においては、米国で発売されていなかったXY7のカードまで使用する事ができました。 このように、大会運営を管轄する会社も異なれば、使用できるカードも違います。
日本と米国、それぞれの地域で同じ時期に異なるカードプール、異なるトーナメントシステムを運営しています。

カードの発売時期に関しても、数か月のギャップがあります。
例えば、DP1の発売日について、日本では2006年11月30日に発売されたのに対し、米国では2007年5月23日に発売されています。

DPシリーズ初期では実に4ヶ月23日のギャップがあったのです。

L1で4ヶ月、BW1で4ヶ月、XY1で2ヶ月、SM1で2ヶ月と、ギャップは2ヶ月を切るほどまでに短縮されましたが、それでも日本と米国でのリリース日程の差は、大きな環境差を生み出すことになります。

米国でカードがリリースされるまでの2か月間、日本では最新のカードを使って大会が行われ、流行アーキタイプの傾向などのデータが出てきます。 たとえば、【ゲッコウガBREAK(XY9)】というデザイナーズデッキに対しても、新しいエキスパンションが出るたび、対白レックや対夜の行進の立ち回り、【ジラーチ(PR)】を投入するメリット、【クレッフィ(XY11)】の運用、スタジアムの選定、【スターミー(CP6)】など、多くの試みが行われた後の情報を得た後に自分たちの新環境を戦い、今まで試されていないカードを試すことができます。テレビゲームの周回プレイのようなイメージでしょうか。

実質的に2ヶ月ぶんの情報や経験の蓄積がある国外では、しばしば日本では評価が低いカードの運用が注目され、日本でも流行することがあります。 そういったケースと、日本国内での運用について検討していきます。

2つの水タイプデッキをご紹介しましょう。


Water Tool Box(ガマゲロゲEX+マナフィEX)

これまでの予選で多くのプレイヤーが使った、水タイプのデッキです。

後攻1ターン目、いきなり【ガマゲロゲEX(XY3)】の「グレネードハンマー」を使うなどの高速ビートを仕掛けることもあれば、3匹の【ガマゲロゲEX】で代わる代わる「ブルブルパンチ」を使い続けるなどの耐久戦を仕掛けることができたり、【グレイシアEX(XY9)】や【アマルルガEX(PR)】などでゲームを組み立てるなど、幅広い戦い方ができるデッキです。

このデッキは、2016年のUS NATSの上位で見られ、その後急速に広まりました。
それまで著しく評価が低かった【マナフィEX(XY9)】の価値を急上昇させ、【ガマゲロゲEX】の再評価が行われました。

【ガマゲロゲEX】デッキの中でも、「グレネードハンマー」を使う事を想定したデッキのキーカードとなるのは、【闘魂のまわし】です。 「ブルブルパンチ」のダメージは30、「グレネードハンマー」のダメージは130と、なかなかのダメージではありますが、一般的なたねポケモンEXを相手にしたとき、この2つのワザを組み合わせたダメージは十分とは言えません。

30+30+130で180を組み立てる場合、3ターンがかかり、相手が大技を使うための準備を許してしまう可能性が高くなります。
しかし、このダメージが40+140であれば、HP180のポケモンEXを綺麗に2回の攻撃で倒すことができます。

また、「ブルブルパンチ」のワザの効果で相手は【闘魂のまわし】をはがすための【びっくりメガホン】や、【クセロシキ】を使い回すための【バトルサーチャー】を使えないため、HP220の【ガマゲロゲEX】を維持しやすいのが魅力です。
(もちろん傷ついた【ガマゲロゲEX】は【うねりの大海】で回復します)

【ピーピーマックス】での早い段階でボードアドバンテージを確保するこのデッキは、同等の展開速度で戦った場合、ポケモンを倒されることにより、エネルギーの枯渇が早いため、不利になります。 自分の盤面のエネルギーを守りながら、相手がアドバンテージを稼ぐより早くゲームを終わらせるために、【闘魂のまわし】は最低限の攻撃力と最大限の防御力を得るためのカードとして、WTBのキーカードと言えるでしょう。

このデッキは日本国内でも多くのプレイヤーが使っており、非常に評価が高いと言えます。
背景として、【ボルケニオンEX(XY11)】を中心としたデッキの流行があり、このデッキだけでなく、水タイプデッキ全体が高い評価を得ています。

【サンダースEX(PR)】や【MカメックスEX(XY1)】を搭載した派生型も見られ、応用の幅は非常に広いと言えるでしょう。

このデッキタイプはアメリカのスタンダード環境において、【ガマゲロゲEX】のスタンダード落ちにより、現在普及している形のままでの使用はできませんが、日本国内においては、まだまだ現役を続行できそうです。


Talonflame-GreninjaBREAK(ファイアロー+ゲッコウガBREAK)

序盤3ターンが脆弱な傾向にある【ゲッコウガBREAK】デッキですが、【ファイアロー(XY11)】でのスタートを成功させれば序盤に必要なカードをかき集めながら高いHPの【ファイアロー】を壁にしつつ盤面を整えることが可能です。

構築の傾向としては、たねポケモンの数を減らすため、【スターミー】や【オクタン(XY8)】を採用せず、【プラターヌ博士】等で盤面を整える形が多いです。 また、アメリカのゲッコウガデッキは、【炸裂バルーン】の採用率が非常に高いのも特徴です。

序盤にアタッカーにダメカンを乗せ、中盤以降に使う必要のある「きょだいみずしゅりけん」の回数を減らせる算段です。 日本でも人気のゲッコウガデッキですが、このファイアロー型はUSほどの数の伸びを見せていません。

理由として、ファイアローでスタートしないケースのリスクのウエイトの違いがあると考えます。
アメリカでの公式大会では、BO3(2本先取)での対戦が行われることがしばしばあります。
BO3マッチは、3ゲーム中1ゲームを落としたとしても、残りの2ゲームを確実に勝てるのであればそのマッチでの勝利を得られる、とも考えられます。 そのため、山札に4枚の進化できないファイアローを死に札として抱えるリスクを負っても、3試合中2試合でファイアローでのスタートを成功させられる構築が選択肢として挙がるのです。

一方日本国内の大会。小規模な店舗大会でも、大規模な公式大会でも、1ゲーム負けた段階で優勝が一気に遠のきます。アメリカでは「勝てる」デッキを選択するのに対し、日本国内においては「負けない」デッキを選択する方が理に適っているのです。

大会形式の差により、取る戦略が変わってくる点において、外国産のデッキを使う際にはそのデッキがトーナメントを通してどのような計画を持つデッキなのかを見極める必要があるでしょう。 このデッキ、米国ではローテーションの都合から【ゲッコウガ(XY1)】が使用できなくなりますが、基幹となるシステムには大きく影響しないため、まだまだ使用に耐えるデッキであるといえます。

一方、日本ではそれ以上に使えるカードが広いため、環境の中で相対的に強くなるタイミングを見計らっての投入の余地は十分あるでしょう。
その大会は何回ゲームを行うのか、それに耐えるだけの期待値があるのかを精査した上で、このデッキを握れれば、有利なゲームを多く行うことができるのではないかと考えます。

カードプールの差、ルールの差を検討したうえで、マクロな視点でのデッキ選択を行うことができれば、国内において普及しておらず、広く対策がなされていないデッキで有利なゲームを増やすことができるかもしれません。 インターネット時代ならではの情報によるアドバンテージをうまく活かせるか、スキルが問われます。